人工・低酸素環境

1 人工環境

人工環境とは,様々な地球上の気象条件あるいは室内環境条件を、ある限られた空間の中に人工的に再現することである。 その空間を一般に、人工気象室といっている。

 人工的に創り出す気象条件や環境条件は、基本的には温度(気温)と湿度である。これに付加される要素として、気流、日射、雨、雪、気圧、照明(照度、波長)、さらに最近注目を浴びている空気質(空気組成、マイナスイオン、臭い)などがあ

2 人工気象室

人工気象室には、大きく分類すると次の3つのタイプがある。

Ⅰ.環境制御室
 降雨や降雪に至るまで、多くの気象条件を模擬する実験室で、比較的大規模なものが多い。これは、人間を対象とするよりも、その中に住宅や屋外設備を入れて、様々な研究を行なう実験室である。
 住宅メーカやゼネコンあるいは電力会社の研究所に設置されている。

Ⅱ.人工気象室
 生活環境として室内を想定した気象条件を模擬する実験室で、温熱環境条件のうち、気温と湿度を制御するものである。一般的には、温湿度に加え、気流や放射熱や照明などが付加されている。
 人間を中心とした研究に用いられ、人工気象室とは一般的にこの実験室のことをいう。
 大学や衣料・住宅機器メーカなどの研究室に設置されている。

Ⅲ.恒温恒湿室
 一般に温度や湿度などの環境条件を目的の状態にするための実験室で、物理的な条件として気象要素を与えるものである。主に、材料の物性値などの測定や、熱流や気流などの計測、電子機器の測定のような、物に対する環境を設定を行なう実験室である。自動車などの工業製品の耐候性試験や製品の仕上げ検査などにも用いられている。


 しかし、人工気象室には標準的なものはなく、使用目的によって個別に設計されている。設計の際に、設置場所、規模、性能、付帯機能、安全対策などの留意点がある。過剰性能になる場合が多いので、十分な検討が必要である。

低酸素環境について

従来の低圧低酸素室(低圧室)は、室内の空気の絶対量が減少するが、空気組成は変化しない。すなわち、室内の酸素濃度は、どの標高でも20.9%である。
一方、常圧低酸素室(低酸素室)は、室内の空気の絶対量は変化しないが、空気組成が変化する。すなわち、室内の酸素濃度は、目標とする高度の酸素分圧に相当する酸素濃度となる。

低酸素制御装置

 本装置の特徴は、膜分離方式である。他に、PSA(吸着)方式、ボンベ方式がある。装置の構成を以下に示す。

1)『空気圧縮機』:圧縮空気を造る。
2)『膜ユニット』:装置の心臓部である圧縮空気を窒素富化ガスと酸素ガスに分離する。
3)『制御ユニット』:分離された窒素富化ガスを低酸素空気として制御・供給する。
           ※膜ユニットと制御ユニットは『酸素制御装置』として一体化している。
4)『混合・供給ユニット』:低酸素空気を低酸素室に供給する。

 現在、呼吸用の超小型のものから、複数人が滞在・睡眠、運動ができる大型のものまで実用化されている。当社は、睡眠、滞在、運動ができ、移動が可能で、比較的設置が簡単である実用的な小型から中型の装置を開発した。また、常圧低酸素室の場合には、窒素富化ガスを使用して、酸素富化ガスを捨てているが、逆に窒素富化ガスを捨て、酸素富化ガスを使用すれば、酸素濃度25%から30%の常圧高酸素室を作ることができる。つまり、常圧の低酸素室と高酸素室を同時に造ることができる。

①吸引式低酸素装置
 低酸素制御装置で生成される低酸素空気をマスクを介して吸引するシステムで、  呼吸や軽運動に使用できる。また、円筒型やドーム型組立式低酸素室と組合わせ ることによって、滞在、睡眠に使用できる。

②常圧低酸素室
 低酸素制御装置とボックス型組立式低酸素室あるいは居室型低酸素室を組合わ せたシステムである。滞在、睡眠、運動に使用できる。